引っ越してから数週間が経った頃、ポストにNHKからの封筒が入っていた。
普段なら、それほど気にせず開封する郵便物だ。
ところが、その日は違った。
封筒には『転送不要』の文字。
そして、中に入っていた書類のタイトルは『ご契約住所の変更のお知らせ』だった。
「住所変更のお知らせ?」
私は不思議に思った。
引っ越してから、NHKに住所変更の連絡をした覚えがなかったからだ。
書類には、契約者が住所を変更した場合はNHKに届け出る必要があること、届け出がない場合でも調査などで転居を確認できれば住所変更手続きを行うことがある、と書かれていた。
そこまでは理解できた。
しかし、その下を読んだ瞬間、私は目を疑った。
『お客様の住民票(除票)の写しを取得して』
「……えっ?」
思わず声が出た。
さらに続きを読むと、NHKが転居の事実を確認し、契約住所を変更したという説明があった。
私は書類をテーブルに置いた。
「住民票って、本人以外でも勝手に取れるの?」
すぐに夫を呼んだ。
「ねえ、これ見て」
「何?」
「NHKから通知が届いたんだけど」
夫は書類を読み始めた。
そして、私が指さした部分で手を止めた。
「住民票の写しを取得?」
「そう。私、そんな許可した覚えないんだけど」
夫は眉をひそめた。
「普通は本人か家族が取るものじゃないの?」
「私もそう思ってた」
私は以前、役所で住民票を取得したときのことを思い出した。
本人確認書類を提示し、必要な手続きをした。
だからこそ、本人が知らないところで第三者が取得できる場合があることに驚いた。
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