自宅マンションに越してきて、8年目。敷地内の駐車場には空きがなく、私はずっと順番を待っていた。
一昨日、管理会社から連絡があった。
「駐車場に空きが出ました。今日からでも借りていただけます」
待ち望んでいた知らせだった。私はすぐに借りたいと伝え、手続きをお願いした。ようやくマンションの駐車場を使えると思い、ほっとしていた。
ところが今朝、車へ行くと、ワイパーに紙が挟まれていた。
取り出して見ると、そこには大きくこう書かれていた。
「駐車場使用契約はお済ですか?まだなら不法侵入になるかも?」
私はその場で、紙を持ったまま立ち止まった。
契約を申し込んだのは一昨日だ。管理会社から空きが出たと連絡を受け、今日からでも借りてよいと言われたので、すぐにお願いした。それなのに、無断で駐車しているかのような言葉を車に貼られていた。
「契約のことは、管理会社に確認すれば分かるのに」
そう思うと、腹が立った。8年も空きを待って、ようやく借りられた場所だ。使い始めたばかりの朝に、こんな紙を見つけるとは思わなかった。
ただ、紙には誰の名前も部屋番号もない。誰が挟んだのか、なぜ契約を疑ったのかは分からなかった。
以前からその区画を使っていた人がいて、事情を知らずに注意したのかもしれない。あるいは、管理会社の手続きがまだ周囲に伝わっていないだけなのかもしれない。紙の文面だけで、相手の意図までは決めつけられなかった。
それでも、「不法侵入になるかも?」という書き方には引っかかった。契約が済んでいるか尋ねるだけなら、もう少し穏やかな伝え方もあるはずだ。
わざわざ強い言葉を選ばれたように感じ、こちらが悪いことをしたかのような気持ちにさせられた。
私は、すぐに紙へ言い返すのはやめることにした。まず契約書や管理会社との連絡を確認し、利用開始日や区画に間違いがないか確かめる。必要なら、ワイパーに挟まれていた紙の写真も添えて管理会社に問い合わせるつもりだ。契約が確認できれば、その事実を管理会社から伝えてもらうのが一番確実だと思った。
相手が誰か分からないまま、怒りに任せて返事を書けば、思わぬトラブルになるかもしれない。だからといって、何も言わずに済ませるのも納得できない。こちらが正式に借りた区画なのかを確認したうえで、今後同じような紙を挟まれないよう、管理会社に状況を共有することにした。
8年間待った駐車場を、ようやく借りられた。そのうれしさは、ワイパーの紙を見た瞬間に曇ってしまった。契約をしたばかりの私に向けられた「不法侵入になるかも?」という言葉。腹は立つけれど、まずは記録を確かめ、管理会社を通して事実を伝える。それが、あとに残るやり取りとして一番すっきりする返し方なのかもしれない。