隣の家の車が、また道路にはみ出していた。
最初に気づいたのは、朝のゴミ出しの時だった。住宅街の細い道路に、黒い大きなミニバンのフロント部分がぬっと出ている。駐車場に停めているつもりなのだろうが、車体が長すぎて、鼻先が完全に道路側へはみ出していた。
最初は「今日だけかな」と思った。
荷物を下ろしている途中かもしれない。少しだけ前に出しているだけかもしれない。
そう自分に言い聞かせて、その日は黙って通り過ぎた。
けれど、翌日も同じだった。
その次の日も、そのまた次の日も、黒い車は同じ角度で道路にはみ出していた。歩いて通る時も、自転車で通る時も、こちらがわざわざ車道側に膨らまなければならない。対向車が来ると、さらに気を遣う。なぜ他人の家の車のために、毎回こちらが危ない思いをしなければいけないのか。
ある夕方、ついに危ない場面が起きた。
近所の小学生が自転車で通りかかった時、前から軽自動車が来た。子どもははみ出した車を避けようとして、少しふらついた。幸い接触はしなかったが、見ていた私は背中が冷たくなった。
「これ、いつか事故になる」
そう思った私は、すぐに写真を撮った。
道路に出ている部分、駐車場の白線、道路幅が分かる角度。感情だけで言っても揉めるだけだと思ったから、まずは証拠を残すことにした。
翌朝、隣人に声をかけた。
「すみません。車が少し道路に出ていて、通る時に危ないので、もう少し下げてもらえませんか」
できるだけ丁寧に言ったつもりだった。
しかし返ってきたのは、予想外の反応だった。
「うちの敷地内に停めてるんで」
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