「早く帰りたい」と毎日つぶやく私を、上司は笑った。
「仕事も終わっていないのに帰るつもりか? 社会人としての自覚が足りないな」
午後7時30分。
BK商事のオフィスには、まだ大勢の社員が残っていた。
けれど、私の仕事は午後6時にはすべて終わっていた。
それなのに、課長の佐藤は毎日のように私を引き止める。
「この資料、明日の朝までに作り直しておけ」
「課長、こちらは先ほど提出した資料ですが……」
「俺が気に入らないんだよ。言い訳するな」
私は黙って資料を受け取り、パソコンを開いた。
時計を見ると、午後7時45分。
家では妻と5歳の娘が夕食を待っている。
娘は毎晩、電話で同じことを聞いてくる。
「パパ、今日は何時に帰ってくるの?」
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