駐車場で、前の車の後ろにガムテープで貼られた紙が目に入った。
最初は正直、「え、なにこれ。誰かに文句でも書かれたのかな」と思った。紙は少し斜めで、茶色いガムテープで何カ所も留められている。遠目には、かなり物々しく見えた。
車間距離が近すぎたのか。
ぶつけられたのか。
それとも、駐車マナーへの注意書きなのか。
気になって近づいてみると、そこには手書きでこう書かれていた。
「超初心者です。お先にどうぞ!車間距離注意」
思わず、声が出そうになった。
怒りでも、苦情でも、威圧でもなかった。そこにあったのは、ただの必死なお願いだった。
たぶん運転を始めたばかりの人なのだと思う。まだ車の流れに乗るのも怖い。後ろから急かされると焦る。車間距離を詰められると、ブレーキひとつ踏むのにも緊張する。だから、自分の未熟さを隠すのではなく、ちゃんと周りに伝えることにしたのだ。
しかも、言い方が優しい。
「お先にどうぞ」
「近づかないでください」ではなく、相手に道を譲る形でお願いしているところに、人柄が出ている気がした。
私は少し前に、初心者マークをつけていた頃のことを思い出した。信号待ちで後ろにぴったりつかれただけで心臓が鳴った。坂道発進で失敗して、クラクションを鳴らされ、帰ってからしばらく運転が怖くなったこともある。
あの時、もし後ろの車が少しだけ待ってくれていたら。
もし誰かが「大丈夫、ゆっくりでいいよ」と思ってくれていたら。
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