息子から連絡が来たのは、朝の9時すぎだった。
「嫁ちゃん、インフルになった」
その一言で、私はすぐに冷蔵庫を開けた。熱がある時は、作る気力も食べる気力もなくなる。けれど、何か口に入れないと薬も飲めない。小さな子どもがいたら、なおさら家の中は回らなくなる。
「何かいる?」と聞くと、息子は少し遠慮した声で言った。
「大丈夫。なんとかする」
その「大丈夫」が、一番大丈夫じゃないことを、私はよく知っている。
昔、自分が高熱を出した時もそうだった。台所に立つだけで息が上がり、冷蔵庫の前で何を作ればいいのか分からなくなった。誰かが玄関先に温かいものを置いてくれるだけで、どれだけ救われるか。
だから、私は余計なことは聞かなかった。
うどんを茹で、喉を通りやすいように冷ましておいた。ハンバーグは少し甘めのたれにして、子どもでも食べやすくした。天ぷらは少しだけ。野菜も不足しないように、トマトときゅうりを入れたサラダを詰めた。
作りながら、少しだけ迷った。
本当は顔を見たい。
熱はどのくらいあるのか聞きたい。
洗濯物はたまっていないか、台所は片付いているか、気になることはいくらでもある。
でも、そこで私が家に上がったら、お嫁ちゃんは気を遣う。寝ていたくても起きてしまう。インフルをもらって、こちらが倒れたら、結局また迷惑をかける。
だから決めた。
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