「お宅の屋根瓦、壊れてますよ」
そう言いながら、見知らぬ男が勝手に玄関の中へ入ってきました。
その瞬間、私は固まりました。
インターホンが鳴ったので、いつもの宅配かと思って玄関を少し開けただけでした。すると作業着姿の男性が立っていて、開口一番そう言ったのです。
「近くで工事してたら見えたんですけど、瓦がずれてます」
「このままだと雨漏りしますよ」
「今ならすぐ見られます」
早口でまくしたてるように話され、私は何が何だか分かりませんでした。
しかもその男性は、こちらが「ちょっと待ってください」と言う前に、玄関の内側へ一歩入ってきました。
靴の先が、完全に家の中に入っていました。
私はぞっとしました。
「入らないでください」
できるだけ落ち着いた声で言いました。
でも男性は、
「いや、危ないんで。早めに見た方がいいです」
と引きません。
屋根のことなんて、急に言われても分かりません。確かに素人には確認しにくい場所です。だからこそ、不安をあおられると怖くなります。
でも、勝手に玄関に入ってくる時点でおかしい。
そう思いました。
私はドアチェーンをかけたまま、スマホを手に取りました。
「名刺をください。会社名も教えてください」
そう言うと、男性の表情が少し変わりました。
「いや、名刺は今ちょっと切らしてて」
「会社は近くなんで」
「とにかく屋根を見ないと」
その返事で、さらに怪しいと思いました。
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