本当に、この男は気持ち悪いと思いました。
最初は、ただの勘違いだと思うようにしていました。
同じマンションに住む男性で、顔を合わせれば挨拶する程度の相手。年齢は私よりかなり上で、最初は「近所の人だから感じよくしておこう」くらいにしか考えていませんでした。
でも、ある日を境に少しずつ違和感が増えていきました。
ゴミ出しの時間に、なぜかよく会う。
買い物から帰ってくると、エントランス付近にいる。
エレベーターで一緒になると、妙に距離が近い。
「今日は遅かったね」
「その服、似合ってるね」
「どこまで買い物に行ってたの?」
最初は笑って流していました。
けれど、だんだん返事をするのも嫌になりました。私の生活時間を見られているような気がして、外に出るたびに胸がざわつくようになったのです。
決定的だったのは、ある夜でした。
仕事から帰ってきたのは20時過ぎ。エントランスに入ろうとしたとき、背後から声をかけられました。
「やっと帰ってきた」
振り返ると、例の男性が立っていました。
その言い方に、全身がぞわっとしました。
偶然会った人の言い方ではありませんでした。
私は「こんばんは」とだけ言って足早にエレベーターへ向かいました。でも男性はそのままついてきました。
エレベーターの中で、彼は小さな声で言いました。
「最近、避けてる?」
私は笑うこともできませんでした。
「急いでいるので」
そう言って、自分の階に着くとすぐに降りました。
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