身内に不幸があり、0歳の息子に着せる黒い服を探しに西松屋へ行った。
本当なら、きちんとした黒い服を選ぶべきなのだろう。
でも赤ちゃんの服はサイズが小さく、黒っぽいものは意外と少ない。
「まだ0歳だし、真っ黒ならトレーナーでも大丈夫かな」
そんな気持ちで店内を探していると、黒いトレーナーが1枚だけ目に入った。
「お、これならいいじゃん」
手に取った瞬間、私は固まった。
胸元に、小さな白いおばけの柄がついていた。
しかも、そのおばけはとてもにこやかで、片手を上げて「やあ」と挨拶しているように見える。
「えっ……」
店内で声を出しそうになり、慌てて口を押さえた。
黒い服。
不幸の席。
そして、胸元には笑顔のおばけ。
あまりにも状況に合いすぎているような、合っていないような。
私はトレーナーを戻そうとした。
しかし、もう一度見ると、今度はおばけの表情が妙に可愛く見えてきた。
「いや、駄目でしょ……でも可愛い……」
買うべきか、やめるべきか。
売り場で1人、真剣に悩んでしまった。
そこへ、近くにいた年配の女性が声をかけてきた。
「黒なら、こちらの服もありますよ」
私は事情を説明し、胸元の柄を見せた。
女性は一瞬だけ目を丸くしたあと、静かに笑った。
「赤ちゃんが着るなら、少しくらい可愛い柄があってもいいんじゃないですか」
「でも、おばけですよ?」
「おばけだって、怖い顔とは限らないでしょう」
その言葉に、私は少しだけ救われた。
悲しい出来事があった日。
家族全員が沈んでいて、誰も笑えない空気になることは分かっていた。
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