「このタグが欲しくて買ったまである」
そう言うと、夫はしばらく黙った。
私が手にしていたのは、LEPSIMのレースキリカエオールインワン。
定価は9,000円。
でも、付いていた赤い値下げシールには、驚きの文字が印刷されていた。
「表示価格より99%OFF」
最初に見つけたとき、私は服より先にタグを確認した。
「えっ、99%OFFって本当?」
計算すると、9,000円の1%は90円。
まさかと思いながら、商品を持ってレジへ向かった。
ところが、レジに並んでいる間も不安だった。
「シールの貼り間違いでは?」
「本当は9%OFFなのでは?」
「レジで止められたら恥ずかしい」
そんなことを考えながら、商品をカゴに入れていた。
すると、後ろに並んでいた女性がタグを見て声を上げた。
「これ、99%OFFなんですか?」
私は振り返り、少し得意げに答えた。
「そうみたいです」
女性は服をじっと見つめたあと、すぐに店員さんへ確認しに行った。
「この商品、本当に99%引きですか? 入力ミスじゃないですか?」
店員さんもタグを見て、目を丸くした。
「少々お待ちください」
その瞬間、私の胸は少し不安になった。
もし間違いなら、元の価格で買うことになる。
9,000円なら、さすがに簡単には決められない。
店員さんはレジの画面と商品番号を確認し、責任者らしい方を呼んだ。
周囲のお客さんも、いつの間にかこちらを見ていた。
「やっぱり貼り間違いでした」と言われるのを覚悟していた。
しかし、責任者の方は商品タグを確認すると、静かにうなずいた。
「こちらは、99%OFFで間違いございません」
店員さんがレジに商品を通す。
表示された金額は、税込99円だった。
思わず私は、タグとレジ画面を何度も見比べた。
定価9,900円の商品が、99円。
夫に電話すると、第一声はこうだった。
「本当に着るの? それともタグだけ飾るの?」
私は笑いながら答えた。
「もちろん着るよ。でも、このタグは絶対に切らない」
家に帰ってから、私は服をハンガーに掛けた。
そして、赤い「99%OFF」のシールが貼られたタグを、写真に撮った。
夫はその写真を見ながら、
「服よりタグを大事にしてない?」
と呆れていた。
でも、この金額で買えた証拠は、このタグにしか残っていない。
だから私は、タグを切らずに着ることにした。
もし誰かに「その服、いくらだったの?」と聞かれたら、胸を張って答える。
「定価9,000円。支払ったのは99円。そして、私が一番欲しかったのは……この99%OFFのタグです」