私は工事現場の現場監督として十年以上働いてきた。山間部の現場が多く、近くに飲食店もコンビニもない。だからこそ、毎日きっちり「昼」を届けてくれる存在は、現場の命綱だった。
その役を担ってくれていたのが、弁当屋「デリボム弁当」。十年間、一日100個を欠かさず、雨の日も雪の日も運んでくれた。価格は一個1000円。安いとは思わないが、内容と配達の手間を考えれば、こちらも納得していた。
ある日、翌日の注文確認の電話を入れた。いつものように穏やかに、事務的に済むはずだった。
「明日もお弁当、100個お願いします」
返ってきたのは、妙に芝居がかった笑いだった。
「……一日100個程度の弁当で、大きな顔しないでもらえる? こっちは特別に安くしてやってるんだよ。これからは一つ1500円が妥当かな」
一瞬、耳を疑った。十年間の関係が、まるで“こちらが施しを受けている”かのような口ぶり。私は声を整えた。感情で返せば、現場の人間として負けだ。
「では、いりません。取引は終了でお願いします」
沈黙の後、相手の声が裏返った。
「え? 大丈夫ですか? うちの弁当がなくなったら困るでしょう。特別に……1300円でいいよ」
「結構です」
値段の問題ではなかった。侮辱されたのは、現場の人間の食事であり、十年間の信頼だった。それに、正直に言えば、弁当の質もここ数年で落ちていた。日替わりと言いながら似たようなおかずが続き、もやし中心。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=4HXc_7iGR64,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]