私は赤城。三代続く町工場を継ぎ、派手さはなくとも、地元企業の「困った」を加工技術で支えてきた。設備は古い。しかし、納期と品質だけは一度も裏切らない――それがうちの看板だった。
その日、代々付き合いのある銀行に呼び出された。応接室で待っていたのは担当ではなく、副支店長の篠山だった。名刺を置くなり、彼は薄く笑った。
「融資の見直しでーす。
ボロ工場への融資、中止ね。今すぐ十億、返してもらえません?」
冗談のような語尾。だが目は本気だった。私は言葉を選び、現実的に返済期限の相談を試みた。だが篠山は机を指で叩き、まるで格付けでもするように言い切った。
「古い機械、古い建物。担保価値、低いよ? 返せないなら――困るのはそっちでしょ?」
このやり取りは今月で三度目だった。毎回、話を揺さぶって優位に立ちたいだけ。交渉ではなく、侮辱だ。私は椅子から立ち、深く一礼した。
「承知しました。十億円、即日で返済します。手続きをお願いします」
篠山の笑みが一瞬止まった。「え、本気?」と口が動いたのが見えた。だが私はもう戻らない。言ったのは向こうだ。
返すと言った以上、返すだけだ。
――その日の夕方、私は十億を振り込んだ。
翌朝、銀行から血相を変えた電話が入った。篠山ではない。支店の総務部長だった。
「赤城さん、大変です! うちの本社ビルが……売却されました。いったい何をしたんですか!?」
私は静かに答えた。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=kgnB0uLt60w,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]