最終面接の部屋は、やけに静かだった。空調の風が紙をわずかに揺らし、長机の向こうで面接官が腕を組む。私は背筋を伸ばし、差し出された履歴書の控えを見つめていた。施設育ち――その一行だけが、いつも場の温度を変える。
面接官は履歴書を一枚ずつ、わざと音を立ててめくった。学歴、資格、職歴、推薦状。最後に「身元保証人」の欄へ視線が落ちた瞬間、口角が吊り上がる。
「……施設育ちw? なるほどね」
次の瞬間だった。彼は私の履歴書を、ためらいもなく真っ二つに破り捨てた。紙が裂ける音が、胸の奥を切り裂くように響く。
「君みたいな素性の知れない人間を採るわけないだろ。今すぐ身元保証人を連れてこい。いないなら帰れ」
同席していた人事担当が、止めようと口を開きかけたが、面接官の視線ひとつで黙った。私は一度、息を吸ってから、静かにスマートフォンを取り出した。悔しさで声を荒げれば、彼の思うつぼだ。施設で学んだのは、怒りを飲み込む技術でもあった。
「分かりました。呼びます」
面接官が鼻で笑う。「呼べるならな」。私は通話ボタンを押し、短く告げた。
「姉さん、最終面接。
面接官が“身元保証人を連れてこい”って」
数秒後、廊下の奥がざわついた。高いヒールの足音が一定のリズムで近づき、受付の声が不自然に丁寧になる。ドアが開き、凛とした女性が入ってきた。黒のスーツ、無駄のない所作、鋭い眼差し。場の空気が、彼女の入室だけで塗り替わる。
面接官は一瞬で立ち上がった。顔色が変わり、喉が鳴る。
「……な、なぜあなたがここに……」
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=kmMq3pTJ6fs,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]