月曜の朝、俺は会社の入館ゲートの前で立ち尽くしていた。社員証をかざしても、機械は冷たい電子音を返すだけで扉は開かない。背後では通勤客の流れが滞り、視線が刺さる。守衛が困った顔で近づき、端末を確認して言った。
「……本日付で、入館権限が停止されています。人事から何か連絡は?」
連絡など来ていない。むしろ、先週金曜の退社前、上司の黒木課長は笑顔で肩を叩き、「来週から大きな案件を任せる」と言ったばかりだった。
俺はその言葉を信じて週末も資料を整えた。なのに、今ここで扉すら開かない。
受付に通され、会議室で待たされた。しばらくして現れたのは黒木課長と人事担当だった。黒木は、あたかも残念だと言わんばかりの表情で、淡々と告げた。
「君が顧客データを外部に持ち出した疑いがある。社内規定上、懲戒解雇だ」
頭が真っ白になった。証拠などあるはずがない。持ち出した覚えもない。抗議しようとすると、人事は書類を差し出し、「すでに手続きは完了しています」と繰り返した。黒木は、視線を合わせない。そこに悪意の匂いがあった。俺のプロジェクトの成果を横取りし、責任だけを押し付けるために仕組んだのだと、直感で理解した。
その日のうちに私物を段ボールに詰め、社員用通路から出された。悔しさで胸が焼けるのに、声は出なかった。会社の看板を見上げた瞬間、自分が積み上げたものが一枚の書類で消える現実が、ただ残酷だった。
しかし翌日、状況は予想もしない方向へ転がった。
火曜の午前、俺のスマートフォンが鳴った。表示された番号は、社内の代表回線。出ると、聞き慣れないほど切迫した声が飛び込んできた。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=YokVp9BCrOg,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]