「またか……」 山の作業場に着いた俺は、思わずため息をついた。 俺は代々続く林業を継いでいる。町から少し離れた山に作業場と資材置き場があり、伐採した丸太を一時的に置いたり、重機を入れたりするための広い私有地を持っている。 そこは一見すると、ただの開けた広場に見える。だからなのか、ここ数年、勝手に入り込んでキャンプをする連中が後を絶たなかった。
もちろん、入口には「私有地につき立入禁止」「無断駐車禁止」と看板を立ててある。だが、そういう人間ほど看板など見ない。見ても、自分たちには関係ないと思うらしい。 その日も、広場には見慣れない車が三台停まっていた。テントが張られ、焚き火台が置かれ、若い男と中年の男たちが楽しそうに笑っている。 「すみません。ここは私有地です。キャンプ場ではありません」 俺が声をかけると、いちばん年上らしい男が面倒くさそうに振り向いた。 「空いてるんだからいいだろ。山はみんなのものだろうが」 隣の若い男も、スマホを構えたまま笑った。 「マジで穴場っすね。無料でこの景色、最高じゃないですか」 俺は一瞬、言葉を失った。
「無料じゃありません。ここは仕事場です。これから伐採した丸太を搬出する予定もあります。危険なので、すぐに撤収してください」 だが彼らは聞く耳を持たなかった。 「はいはい、うるさいなあ。少し使うだけですよ」
「映え写真だけ撮ったら帰りますって」
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