体育館の空気が、まるで別の世界に切り替わったようだった。
体育祭の学年演技。毎年、全校生徒と保護者が楽しみにしている恒例行事だが、今年ほど男女の雰囲気の差が激しかった年はなかったかもしれない。男子の出番になると、体育館の床を踏み鳴らす音が響き、会場のざわめきが一瞬で止まった。白いシャツに短パン姿の男子たちが横一列に並び、腰を落とし、拳を握る。
その表情は、いつもの教室でふざけ合っている顔とはまるで違っていた。
「お前ら、いくぞ」
先頭に立つ男子の低い声が飛ぶと、周囲の空気がピリッと張り詰めた。次の瞬間、全員が声をそろえて叫び、胸を叩き、足を踏み鳴らす。まるで戦いの前に気合を入れる戦士たちのようだった。誰かが少しでも遅れれば、隣の男子が目で合図を送る。汗が額を流れても、誰一人として力を抜かない。体育館の床が揺れるほどの迫力に、観客席からは思わず「おお……」という声が漏れた。
普段は先生に注意されても笑ってごまかす男子たちが、この時だけは別人だった。腕の角度、足の開き、声の強さ。そのすべてに妙な本気が宿っている。本人たちは真剣そのものなのに、見ている側からすると、その熱量があまりにも全力すぎて、どこか笑えてしまう。
けれど、その笑いは馬鹿にするものではない。全員で一つのものを作ろうとする不器用な一生懸命さが、見ている人の胸を熱くした。
そして、男子の演技が終わった直後だった。
空気は一変した。
黄色いシャツを着た女子たちが、明るい音楽に合わせて軽やかに入場してくる。さっきまで体育館を支配していた重たい気迫は、まるで春の風にさらわれたように消えていった。
記事はまだ終了していません。次のページをクリックしてください
引用元:https://www.youtube.com/watch?v=AUFTN1CNo8o&list=RDAUFTN1CNo8o&start_radio=1,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]