電車のドアが開いた瞬間、空気が止まった。
出口ど真ん中、黄色い点字ブロックの上。
若い女が足を投げ出して座り込み、イヤホンつけてスマホをスクロールしている。
朝のラッシュ。
全員が「は?」って顔をした。
でも誰も言わない。
いつものやつだ。
見て見ぬふりして通り過ぎる“空気”。
その時、降りようとした白髪のじいさんの足が、女のスニーカーに引っかかった。
体が前に持っていかれ、手すりにぶつかりながらなんとか踏ん張る。
周りから「危ない!」の声。
じいさんは振り向き、静かに言った。
「ここ、危ないよ」
女はイヤホンを片耳だけ外し、めんどくさそうに見上げた。
「は?ちゃんと見て歩けば?」
車内の空気が一段冷えた。
誰かが息を飲む。
誰かが舌打ちする。
でもまだ、誰も動かない。
女は足をどけるどころか、わざと伸ばし直し、スマホを顔に近づけた。
「文句あるなら駅員呼べば?」
その言い方が、完全に火に油だった。
ドア横に立っていた一人の男が、ゆっくり顔を上げた。
背が高い。
腕が太い。
日本人と外国人のミックスのような顔立ち。
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