病院の自動ドアが開いた瞬間、雨が“壁”みたいに降っていた。
俺の腕の中には、生まれたばかりの赤ん坊。
妻は満面の笑みで「ほら、かわいいでしょ?」って、いつも通りの“いい嫁”の顔。
――そのときだ。
父が一歩近づいて、静かに手を伸ばした。
「その子、こっちに」
妻が反射で抱え直した瞬間、父の声が低く刺さった。
「…置け。今すぐ」
俺は息が止まった。
父がこんな言い方をする人間じゃないって、知ってる。
なのに、目だけが“確信”で冷えていた。
次の瞬間、俺は鍵を握って叫んでた。
「帰るぞ。今すぐ!」
車に乗り込む。雨音がうるさいほどなのに、車内は異様に静か。
妻は「どういうこと?!」と怒鳴りながらも、赤ん坊を抱いたままスマホをいじり始めた。
画面を連打。削除。削除。削除。
通話履歴も、メッセージも、何かを“消してる”。
俺は前を見てるふりをして、ずっとバックミラーを見てた。
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