真冬の夕方、都内の冷たい風がロビーの回転扉を鳴らしていた。私はその高級ホテルのフロントに立ち、予約名を告げた。妻は少し離れたソファで待っている。楽しみにしていた小旅行で、余計な騒ぎは起こしたくなかった。
対応に出たのは新人受付の三浦舞衣だった。若く、端正な制服姿がよく似合う。しかし目は冷たい。私のカジュアルな服装を一瞥した途端、表情から温度が消えたのが分かった。
「お客様のご予約が見当たりません」
一カ月前に入れている。確認メールもある。私は淡々と説明し、スマートフォンの画面も見せた。それでも三浦は画面を見ようとせず、キーボードを叩くふりだけをして首を振った。
そのとき隣のカウンターに、いかにも富裕層らしい夫婦が現れた。三浦は別人のように笑い、声のトーンまで変えた。「ようこそお越しくださいました」その差が、あまりに露骨だった。
私は再度、落ち着いて言った。「予約は確実に完了しています。もう一度確認してください」三浦は口元を歪め、周囲に聞こえる声量で言い放つ。
「こちらは高級ホテルです。貧乏人は敷居を跨ぐな、って言葉をご存じですか」
背後に並んでいた客が振り返り、視線が一斉に刺さった。
三浦は同僚と目配せし、くすくす笑う。妻の方を見たくなかった。恥をかかせたくない。怒りが胸の奥で燃えたが、私は深呼吸して理性を取り戻した。
そして静かに、しかし一切の揺らぎなく告げた。
「総支配人を連れて来い」
三浦は一瞬たじろいだが、すぐ嘲笑に戻った。「総支配人はお忙しいので。そのような要望には対応できません」私は続ける。
「今すぐ呼べ。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=XPAWUIj2LR8,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]