入社式当日、俺は妹の美岬を車で会場まで送った。会場は地元でも名の通った高級ホテルの宴会場で、天井のシャンデリアが眩しいほどに輝いていた。妹は新品のスーツに身を包み、胸元の名札を何度も確かめている。十五年前に両親を失い、十歳だった妹を親代わりに育ててきた俺にとって、その姿は誇りそのものだった。
俺の名は斉藤誠一郎、四十五歳。
地元で三十五社を傘下に持つ斉藤グループの会長だ。製造、建設、IT、小売、サービスまで幅広く手がけ、年商は五百億円規模、従業員は三千五百名を超える。だが妹には、その肩書きを一切明かしていない。美岬には、自分の力で社会に立ってほしかった。
開始予定の午前十時。壇上に立ったのは中央リクルートサービス株式会社の社長、田村大輔だった。にやりと薄く笑い、場違いなほど軽い声で言う。
「本日は特別な企画があります」
新入社員たちが顔を見合わせ、ざわめく。入社式で「企画」という言葉が出る時点で、嫌な予感がした。
田村社長は履歴書を手に取り、学歴を一人ずつ読み上げ始めた。
「君は……聞いたことない大学だな」
「このレベルでよく来れたね」
笑いが起きる。笑う側には緊張の逃げ道がある。笑われる側には逃げ場がない。俺は奥歯を噛み、様子を見守るしかなかった。
そして美岬の番が来た。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=2_6_9cGpSB0,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]