新築祝いの招待状が届いたのは、現場から戻ってシャワーを浴びた後だった。差出人の名前を見て、俺は一瞬だけ手を止めた。高校の同級生、神谷。大企業勤務で、同窓会でもいつも中心にいる“エリート”だ。
土方の俺とは、もう交わることもないと思っていた。だが文面は丁寧で、「皆で祝ってほしい」と書かれている。
俺は礼儀として顔を出すだけ出して、早めに帰ろうと決めた。
当日、俺は作業着では行かなかった。きちんとしたシャツにジャケット、手土産は無難な菓子折り。靴も磨いた。泥の匂いを持ち込まないよう、神経質なくらい気を遣った。
駅から住宅街へ入ると、真新しい外壁が夕陽を反射していた。門柱に刻まれた「神谷」の文字が、妙に遠い世界の看板のように見える。
玄関前には同級生が数人集まり、久々の再会に笑い声が弾んでいた。
神谷はスーツ姿で、家の前に立つだけで“勝者”に見える。俺が会釈すると、彼は一瞬だけ目を細め、わざとらしく声を張った。
「お、来たんだ。……あれ、土方って今も泥だらけなんでしょ?」
周囲が笑う。俺は笑わなかった。手土産を差し出し、短く言った。
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