最年少で課長に昇進したとき、社内は祝福よりも警戒の空気が濃かった。数字を上げても「若さだけで担げる神輿だ」と囁かれ、特に隣の席の同期ライバルは、会議のたびに私の提案へ細い棘を刺してきた。
疲弊が積もり、有給をまとめて取った三日目。自宅のポストに、見慣れない筆跡の角封筒が落ちていた。差出人は着任したばかりの新部長。嫌な予感のまま開けると、中には退職届が一枚、既に私の氏名欄まで印字され、署名だけが空白になっていた。
俺は思わず声を漏らした。「マジで助かる!」怒りではない。むしろ、胸の奥で固く絡まっていた糸がほどける感覚だった。若手の成功を面白がらない組織が、こちらの人生を削ってまで守る価値のある場所とは思えなかった。
その場でペンを走らせ、同封の返信用封筒に入れて即日返送した。出社も引き継ぎも、最低限で十分だ。連絡が鳴り続けても、私は淡々とメールで要点だけを返し、余計な情緒は切り捨てた。
そして有給の残り時間で、真横のビルに入るライバル社の面接を受けた。驚いたことに、面接官は私の実績だけでなく、数字の裏の判断まで丁寧に聞いてきた。「課長として何を守り、何を変えたのか」——その質問に、私は初めて呼吸が楽になるのを感じた。
内定は早かった。転職初日、ガラス越しに前職の社屋が見えた。あの同期ライバルが、今度は私の背中を追う立場になったと風の噂で知る。だが勝敗よりも、私には一つ確信があった。退職届を“送ってきた”新部長は、私を追い出したつもりだったのだろう。
結果は逆だった。私は救われ、環境を変え、同じ能力でより正当に評価される場所へ移った。郵送で届いた一枚の紙は、屈辱ではなく、私にとって最短の解放状だったのである。
引用元:https://www.youtube.com/watch?v=3pc6oFyueLA,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]