笑いながら、とんでもないことを口にしたのは取引先の新任部長、橋田だった。
「値引きできないなら契約切るわ。町工場ふぜいが」
応接室の空気が凍る。叔父が二代目として守ってきた小さな工場を、彼は外観だけで見下し、礼儀もなく踏みにじった。
俺の名は名取、三十三歳。小四のとき両親を事故で失い、独身の伯父に引き取られた。泣きそうな顔を隠して笑ってくれた伯父を見て、この人なら生きていけると確信した。伯父は家族として優しいが、工場では厳しい経営者だ。俺は三代目を目指して現場で修行を積んできた。
うちが卸しているのは、ただのモーターではない。伯父が発明し特許を取った特殊モーターで、取引先のバイクメーカーは全国十二工場すべてでこれを使っている。さらに事情がある。前社長が存命のころ、伯父は「知人のよしみ」で特許使用料を五年間、ゼロにしていた。だがその事実を知るのは、もうこの世にいない前社長と伯父だけだった。
新体制になり、窓口が橋田に変わった途端、話は崩れた。
会議では三割引きを要求し、工場の敷地まで押しかけては嘲笑する。
「値引きが無理なら継続契約なし。底辺でも分かるだろ」
その言葉を聞いた瞬間、俺の中で何かが切れた。丁寧に頭を下げ続ける義理は、もうない。
「値引きには応じません。契約は終了です」
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=KZeY-6djFzQ,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]