二千二十五年九月十日、東京。歌手・橋幸夫さんの葬儀は、雨の中でも六百人を超える参列者で埋め尽くされ、ファンたちは彼の歌と共に最後の別れを惜しんだ。しかし、その場に一人、存在していなかった女性がいた。橋幸夫さんの元妻、橋並子さん──凡子さんである。四十七年間、夫に尽くし、二人の子を育て、義母の介護まで背負った女性は、葬儀に姿を現さなかったのだ。
千九百六十九年、二十二歳の奈美子さん(橋並子)は、熊本出身のごく普通の女性だった。父を早くに亡くし、母に支えられながら育った彼女は、都立豊玉高校を優秀な成績で卒業後、日本航空に入社。客室乗務員として世界中を飛び回り、自由な翼を持つ女性だった。しかし、人生の天秤はここで大きく傾く。千九百六十九年、偶然のようにして出会ったのは、日本を代表する歌手・橋幸夫だった。
運命の出会いは偶然ではなく、橋幸夫自身が意図したものだった。奈美子さんと同じ便に乗るため、チケットをわざと変えたと後に語る橋の行動は、彼女の人生を根底から変える始まりだった。二人は交際を経て、千九百七十年に婚約。奈美子さんは、自由を捨てる決断をする。
客室乗務員としての華やかな世界を後にし、橋幸夫の妻となる道を選んだのである。
千九百七十一年、結婚式の日。白いドレスに包まれた奈美子さんは、人生で最も幸福な瞬間を迎えた。しかし、その幸福はわずか六年で崩れ去る。長女・なおさん、長男・龍五さんを出産し、家事や子育て、夫の事務所運営まで担った奈美子さん。一方、橋幸夫はコンサート、レコーディング、テレビ出演に追われ、家庭の時間をほとんど持たなかった。
記事はまだ終了していません。次のページをクリックしてください
引用元:https://www.youtube.com/watch?v=eiDS4rnvcSg&t=4s,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]