「ありがとうございます。でも、お義母さんは一人で留守番でお願いします」
電話越しにそう言われた瞬間、私は耳を疑いました。
ほんの数分前、私は銀行の窓口で三百万円を振り込んだばかりだったのです。長年、介護施設で働きながら必死に積み上げてきた老後資金。その大半が、その一度の送金で消えました。
通帳に残ったのは、わずかな残高だけ。震える手で通帳を閉じた時でさえ、私はまだ、息子たちに感謝されるものと思っていたのです。
ところが返ってきたのは、感謝ではなく排除の言葉でした。
息子の孝之は、まるで当然のことのように言いました。
「ミキの両親も来るから、人数的にちょっと厳しくてさ」
その後ろで、嫁のミキが明るい声で続けます。
「お義母さんはお留守番でお願いしますね。家のこと、よろしくお願いします」
私は言葉を失いました。
家族旅行だと聞いていたのに。しかも、その費用の大半を出したのは私たち夫婦です。それなのに、私は参加者ではなく、ただの留守番役。電話を切ったあと、手から携帯が滑り落ち、床に沖縄旅行のパンフレットがぱさりと落ちました。白い砂浜と青い海、楽しそうな家族の笑顔。その中に、私たちの居場所は最初からなかったのです。
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