「早く出ろ」と言わんばかりに、隣でウインカーを点滅させる車。
でも私は、まだ運転席に座ったばかりだった。
買い物を終え、立体駐車場へ戻ったのは午後7時過ぎ。
荷物を後部座席に載せ、ドアを開けた瞬間、白いミニバンが横で停止した。
そして、私の駐車枠へ入るつもりなのか、ウインカーを出した。
「いや、まだ出られへんけど……」
私はエンジンすらかけていない。
シートベルトもしていない。
それなのに運転手は、ハンドルを切った状態でこちらをじっと見ていた。
私がスマホを確認していると、パッシングを1回。
続いて短いクラクション。
まるで、私がわざと居座っているかのような態度だった。
だが、こちらにも事情がある。
助手席には倒れやすい買い物袋。
ナビには帰宅経路を入力していない。
周囲には歩行者もいて、すぐに発進できる状況ではなかった。
私は急かされて事故を起こすつもりなどない。
そのまま落ち着いて、荷物を確認した。
するとミニバンの運転手が窓を開けた。
「出るんですよね?早くしてもらえます?」
その言い方に、さすがに腹が立った。
私は窓を少し下げ、静かに返した。
「今、車に乗ったばかりです。出る準備ができたら動きます」
しかし相手は不満そうに顔をしかめた。
「こっちはずっと待ってるんですけど」
ずっとと言っても、まだ2分ほどだ。
しかも少し先には、空いている駐車枠がいくつも見えている。
それでも相手は、この場所にこだわって動こうとしなかった。
後ろには別の車が並び始め、通路が詰まり出した。
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