母の店へ昼食を食べに行った時だった。
駐車場へ入った瞬間、私は思わず二度見した。
青く塗られたバイク専用スペースに、白い軽バンが堂々と停まっていたのだ。
しかも、1台分ではない。
斜めに停めた車体が、複数のスペースを塞いでいる。
店の前には昼時の行列ができ、駐車場も混雑していた。
その間にも、店へ来たバイクが入口で減速する。
ライダーは空いている場所を探したが、専用スペースは軽バンに占領されている。
結局、困った表情のまま駐車場を出ていった。
「これはさすがにひどいな……」
私が写真を撮ろうとスマホを出した時、後方から大きな黒いアルファードが入ってきた。
運転していたのは、体格のいい男性だった。
サングラス越しでも分かるほど、軽バンをじっと見ている。
男性はバイク用スペースの表示を確認すると、小さくため息をついた。
そして、何も言わずにアルファードをゆっくり動かした。
大きな車体が、軽バンのすぐ後ろへ近づいていく。
私は思わず息をのんだ。
まるで、
「その停め方で、本当に困る人はいないと思ったのか」
と無言で問いかけているようだった。
ただし男性は、完全に出られなくするような乱暴な停め方はしなかった。
駐車枠の中へ正確に収め、軽バンの運転手が簡単には気づかないふりをできない位置に車を置いた。
その後、男性は店員に声をかけた。
「バイク置き場に車が停まってるよ。店内放送した方がいいんじゃない?」
数分後、店内に呼び出しが流れた。
すると、奥の席から1人の男性が慌てて出てきた。
軽バンの持ち主だった。
男性は外へ出るなり、黒いアルファードを見て足を止めた。
そして周囲から向けられる視線に気づき、急に声を荒らげた。
「ちょっと停めただけだろ!」
するとアルファードの男性は、怒鳴り返すこともなく、青い地面を指さした。
「ちょっとの間でも、バイクの人は停められないですよ」
静かな一言だった。
だが、駐車場にいた全員に聞こえた。
ちょうどその時、先ほど入れずに諦めたライダーが戻ってきた。
軽バンの持ち主は、何も言えなくなった。
アルファードの男性は自分の車を少し動かし、出口を空けた。
「出られますよ。今度は表示を見てください」
軽バンは逃げるように駐車場を出ていった。
その後、戻ってきたライダーは空いた専用スペースへバイクを停め、男性に深く頭を下げた。
見た目は少し怖そうだった。
けれど、誰よりも周囲を見ていた。
本当に格好いい人は、大声で威圧しない。
ルールを守らない相手にも、静かな一言で自分のしたことを理解させるのだ。