新幹線へ乗ったのは、平日の午後だった。
私は指定席へ座り、荷物を足元へ置いた。
車内はそれほど混んでおらず、静かに移動できると思っていた。
ところが発車して10分ほどたったころ、目の前の座席の隙間から白い靴下が見えた。
最初は、足を組み替えた時に少し見えただけだと思った。
しかし次の瞬間、もう片方の足まで伸びてきた。
前の乗客は座席へ横向きに座り、私の正面にある収納ポケットへ両足を入れていた。
ポケットは大きく引っ張られ、案内冊子が押しつぶされている。
私はしばらく様子を見た。
すぐに姿勢を戻すかもしれないと思ったからだ。
だが相手はスマートフォンを見たまま、足を上下に動かし始めた。
靴を脱いでいても、誰かが使う設備へ足を入れてよいことにはならない。
私は落ち着いた声で言った。
「すみません。収納ポケットへ足を入れるのはやめてもらえますか?」
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