その夜、病院の小児科はいつになく混み合っていた。
泣き声と咳、そして慌ただしく動く看護師の足音が交錯し、待合室はどこか張りつめた空気に包まれていた。
「38.7度……ですね」
診察室で体温計を見た医者の声は静かだった。
私の腕の中には、ぐったりとした息子がいた。顔は赤く、呼吸も少し速い。熱に浮かされたように、時折小さく唸る。
「今日の朝から急に熱が上がって……解熱剤もあまり効かなくて」
私は必死に説明した。仕事を早退して病院へ駆け込んだのだ。頭の中は不安でいっぱいだった。
医者はカルテを見ながら、しばらく無言で息子の体を観察していた。聴診器を胸に当て、背中、そして首元へと手を移す。その動きは慎重で、しかしどこか確信めいているようだった。
そして、ふと小さく呟いた。
「ずっと抱っこしてたでしょ」
一瞬、言葉の意味が分からなかった。
「え……なんでそれを?」
思わず聞き返すと、医者は視線を外さずに答えた。
「この子の体の熱のこもり方と、皮膚の圧痕で分かります。特に背中と後頭部。長時間、密着していた痕跡がありますね」
私は言葉を失った。
確かに今日は、息子が泣くたびに抱き上げ、ほとんど下ろしていなかった。熱で不安なのか、離れるとすぐに泣く。その繰り返しだった。
「それが悪いという意味ではありません。ただ……」
医者は一度言葉を切り、少しだけ表情を和らげた。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=RrHt5UDJ3Ts,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]