ある高校生が、卒業後の進路をクラスメイトに打ち明けた。「俺、陸上自衛隊に入るんだ」。その決意に、仲間たちはそれぞれの反応を見せた。しかし、その中の一人が、信じられないというような表情で、彼にこう言い放った。
「は?あんな戦争軍団、違憲なのに、なんでそんなところに入るんだよ」
その言葉は、彼の心を深く抉った。しかし、彼は何も言い返さなかった。
その言葉の裏にある、あまりにも大きな誤解と、無知の壁を感じていたからだ。
「自衛隊は人殺し集団だ」。そう信じて疑わない人々がいる。確かに、彼らは人を殺傷するための訓練を受け、そのための武器を持つ。戦争が起これば、敵国の兵士を殺すかもしれないし、自らが殺されるかもしれない。それは、紛れもない事実だ。
しかし、なぜ彼らが存在するのか。
それは、戦争をしないためだ。愛する家族を、友人を、そしてこの国に住むすべての人々を、理不尽な暴力から守るため。そのために、彼らは「人殺し」の訓練という、最も過酷な矛盾を、その一身に背負っている。
自衛隊がいなければ、戦争は起きない、と信じる人々がいる。
しかし、それはあまりにも無邪気な幻想だ。残念ながら、この世界には、力で他国を蹂躙しようとする国が存在する。警察官がいなくなれば、泥棒がいなくなるわけではないのと同じように、自衛隊という抑止力がなくなれば、日本は無防備なまま、他国の脅威に晒されることになる。
国民を守るためには、「人殺しの専門家」が必要である。これは、悲しいかな、今の世界の現実なのだ。
セーラー服の彼女とデートを楽しみ、普通の高校生として青春を謳歌していた、あのクラスメイト。彼が、そんな平和な日常を送れるのも、実は、彼が蔑んだ「戦争軍団」が、見えないところでこの国の平和を守っているからなのかもしれない。その事実に、彼はいつか気づく日が来るのだろうか。