「僕たちはこれを食べるので」
東日本大震災後の宮城県石巻市。多くの自衛隊部隊が、懸命の支援活動にあたっていました。
隊員たちが一生懸命に握った温かいおにぎりが被災者の手に渡ると、人々は「おいしい」と涙ながらに頬張りました。しかし、その裏で隊員たちは、自分たちの食事には手をかけていませんでした。
彼らが寝泊まりするのは、朝晩の冷え込みが厳しい「天幕」と呼ばれるテント。
温かい食事はすべて被災者に配られ、自分たちは冷たい缶詰などを口にしていたのです。
そんな中、ある自衛隊員の行動が日本中の心を打ちました。彼は、配給されたレトルトカレーを温めることもなく袋を開け、そのままご飯にかけると、間髪入れずに口へと運び込みました。そして、こう言ったのです。
「これはこれで結構いけるんですよ。もちろん温かいものも食べますが、状況によっては冷たいものも…。被災者たちの苦労に比べたら、こんなこと…」
その自己犠牲の精神と、国民に寄り添う姿は多くの人々の感動を呼び、「こういうことこそ、もっと報道すべきだ」「心から感謝します」と、日本中から賞賛と感謝の声が絶えませんでした。
過酷な状況下でも、ただ黙々と任務を遂行し、被災者を第一に思う。その姿は、自衛隊という組織の誇りと魂を、何よりも雄弁に物語っていました。