昭和六十三年、貴乃花と兄の若乃花が藤島部屋に入門し、二人は史上初の兄弟横綱となる偉業を成し遂げました。その母であり、藤島部屋の女将として君臨した憲子さんは、理想の母親として広く賞賛されていました。しかし、現在、憲子さんと次男の貴乃花は、二十年以上にわたる長い絶縁状態にあり、その関係修復の兆しは一向に見えていません。貴乃花の心の中には、どうしても母親を許せない何かがあるようです。

本記事では、母子の間に生じた亀裂と、それに至る背景について深く掘り下げていきます。

貴乃花が幼少期から受けた厳しい教育は、憲子さんの手によるものでした。彼女は夫をサポートし、弟子たちにも厳しく指導を施しました。当時の藤島部屋は、毎日50人から60人の力士が集まる大所帯であり、憲子さんは力士たちが社会人として立派に成長するよう、礼儀を第一に教え込んでいました。しかし、この厳しい教育は、貴乃花と若乃花が入門することで一変します。

憲子さんは、息子たちを特別扱いするために、部屋のルールを変更しました。それまで弟子たちが従っていた厳格な昭和方式を一変させ、息子たちには雑務を免除し、稽古に専念させました。この優遇措置は、他の弟子たちの間に不満を生じさせ、貴乃花兄弟に対するいじめを引き起こしました。貴乃花は、トイレに閉じこもって腕立て伏せをするほど追い詰められ、若乃花と共に困難な日々を耐え抜きました。

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