2024年8月18日、映画界を代表する伝説的俳優、アラン・ドロンさんが88歳でこの世を去りました。彼の死はフランス映画界のみならず、世界中のファンに大きな衝撃を与えました。ドロンは単なる美貌の持ち主にとどまらず、内面に複雑な葛藤を抱え、それを演技に昇華させた稀有な俳優でした。
ドロンは1935年11月8日、パリで生まれました。
幼少期に両親が離婚し、4歳の時に里子に出された彼は、波乱に満ちた少年時代を過ごしました。その後、17歳でインドシナ戦争に従軍し、過酷な経験を積んだ彼は、帰還後も普通の生活には戻れず、さまざまなアルバイトをしながら自分の道を模索していました。
しかし、1957年のカンヌ映画祭で運命の転機が訪れます。映画プロデューサーの目に留まったことで、ドロンは俳優としての第一歩を踏み出すことになりました。デビュー作『素晴らしき放浪者』でその美貌と存在感が注目されましたが、真の転機となったのは1960年のルキノ・ヴィスコンティ監督作品『太陽がいっぱい』でした。
この映画でドロンは、トム・リプリーという謎めいた青年を演じ、その演技力と魅力で一気に国際的なスターとなります。監督のヴィスコンティは後に「彼の美しさはあまりにも完璧すぎて、最初は彼を起用するのをためらった」と語るほど、その美貌は映画界でも特異な存在でした。しかし、ドロンの演技には内面に潜む暗い感情や葛藤があり、そのバランスが彼をただの「美男子」ではなく、真の俳優たらしめたのです。
記事はまだ終了していません。次のページをクリックしてください