深夜、突然娘に肩を揺さぶられた。
「ママ、起きて!大変!パパが……!」
半分眠ったままの頭で私は飛び起きた。娘の咲は今にも泣きそうな顔でテレビを指差している。画面には緊急速報が流れていた。夫が「海外出張に行く」と言っていた国で、軍事クーデターが起きたというのだ。
血の気が引いた。
数日前、夫の明は三泊四日の海外出張だと言って家を出ていった。出版社で編集者をしている彼は、作家の取材に同行することもある。だから私は、多少の不安はあったものの「仕事なら仕方ない」と自分に言い聞かせていた。
だがテレビには、混乱する街の様子や、日本人の退避が検討されているというニュースが映し出されている。
「パパ、大丈夫かな……」
咲が震える声で言った。
私はすぐに夫のスマホへ電話をかけた。だが、返ってきたのは無機質なアナウンスだけ。
「ただいま電源が入っていないか、電波の届かない場所に……」
胸が締めつけられた。
もし本当に危険な状況に巻き込まれていたら——。
その夜、私は眠れなかった。
しかし、焦りの中でふと違和感がよみがえった。
夫の最近の様子だ。
以前は家族思いだった明。だがここ数年、家ではほとんど口を利かず、休日も「仕事だ」と言って一人で出かけるようになった。娘の誕生日すら祝おうとしなかった。
さらに思い出したのは、彼の部屋で見つけたブランドショップの紙袋。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=4fwdWqS-d8c,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]