俺の名は鉄。宇都宮で小さな店の店長をしている、ごく普通の男だ。平日は厨房とホールに追われ、休みの日だけが、愛車を眺めながら呼吸を整える時間だった。だからこそ、自宅の敷地が“ただの近道”として踏みにじられた瞬間、胸の奥の何かが静かに折れた。
最初に気づいたのは、タイヤ跡だった。門の脇の砂利が掘れ、芝が削れている。ほどなくして犯人は姿を現した。
運送トラックが、堂々と俺の私有地へ入り込み、隣の道へ抜けていく。まるで公共の抜け道のように。
俺は外へ出て声をかけた。
「ここ、俺の家の敷地ですよ。勝手に通らないでください」
運転席の男は窓を少しだけ開け、面倒くさそうに言い放った。
「近道程度でうるせぇ。別に壊してねぇだろ?」
その一言で、血が逆流した。ぶつからなかったから良かった? 一歩間違えれば、俺の家や人に被害が出る。そもそも“通らせない”のが当然なのに、あいつは他人の土地を自分の時間短縮に使うことを、悪いと思っていない。
以降、俺が注意しても、トラックは毎日通った。朝も、昼も、夕方も。わざとだと分かるほど、同じ轍が刻まれていく。
泣き寝入りだけはしたくなかった。だが、直接揉めれば逆恨みされる危険もある。俺は考えた。相手の“便利”を、こちらが“安全”に奪う方法を。
それで、ホームセンターでガスボンベを買った。新品の空ボンベだ。色は緑に塗った。遠目に見れば、工事用の危険物にも見える。並べたのは、敷地の境界線。通り道に見えていたラインを、完全に“塞ぐ”位置に。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=g0A9J5acoos,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]