朝5時の自由が丘を歩いていた。
まだ街が完全に目覚める前。
車の通りも少なく、人の姿もほとんどない時間だった。
私は静かな道を歩きながら、ふと足を止めた。
目の前の歩道に、上着と鞄が置かれていた。
「え……誰か忘れ物したのかな?」
最初はそう思った。
でも、よく見ると少し違った。
上着はきれいに畳まれているわけではない。
でも、雑に投げ捨てた感じでもない。
まるで誰かが大切に置いたように見えた。
その横にはリュック。
中身が見えるような状態でもなく、乱れてもいない。
「こんな場所に荷物を置いて大丈夫なのかな」
私は少し気になった。
周囲を見渡してみた。
すると道路の反対側。
横断歩道の先に、一人の男性が横になっていた。
最初は驚いた。
「まさか……」
と思った。
でも、状況をよく見ると、すぐに理由が分かった。
その男性は、道端に荷物を放置していたわけではなかった。
自分が寝る場所から少し離れた場所に、上着と鞄を置いていたのだ。
しかも歩行者の邪魔にならない場所。
車道にも出ない場所。
通行する人が困らないように考えた位置だった。
私はその光景を見て、少し考えた。
もちろん、公共の場所で寝ることには様々な事情がある。
簡単に判断できることではない。
でも、その人の小さな行動に目が止まった。
多くの人なら、
「どうせ誰も見ていない」
と思ってしまうかもしれない。
でも、その男性は違った。
寝る前に、
「荷物が邪魔にならないように」
「誰かがつまずかないように」
そう考えたのかもしれない。
朝5時の自由が丘。
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