毎週金曜日だけ、小学三年生の息子の上履きが泥だらけになって帰ってくる。月曜から木曜までは普通にきれいなのに、なぜか金曜日だけこうなる。
最初は「校庭で転んだの」という息子の説明を、そのまま信じていた。けれど三週間続くと、さすがに気になり始めた。理由を尋ねても、息子は目をそらして「別に」とだけ答えるようになった。
念のため担任の先生にも様子を尋ねてみたが、「学校では特に変わった様子はありませんよ」という返事だった。
それなのに、金曜日の夕方だけ、息子の帰りが十分ほど遅くなっていることにも気づいた。
さらに気になったのは、ランドセルの中身だった。小さなビニール袋が入っていて、中にはカリカリと乾いた粒のようなものが、いつも少しだけ残っている。それが何なのか、私には見当がつかなかった。
不安になった私は、ある金曜日、仕事を少し早めに切り上げ、下校時刻に合わせて学校の近くへ向かった。校門から出てきた息子は、いつもの帰り道とは違う細い路地へと入っていった。
見失わないよう距離を取りながらついていくと、その先には、住宅街の隅にある小さな空き地があった。息子は空き地の隅にしゃがみこみ、何かに話しかけている。
近づいてみると、そこには痩せた三毛猫が一匹、段ボールの陰に隠れるようにうずくまっていた。
息子はポケットから、あのビニール袋を取り出し、キャットフードを地面に少しずつ置いていた。足を怪我しているのか、猫は片方の後ろ足をかばうように歩いていた。息子はその猫のそばに座り込み、泥だらけの地面の上で、じっと見守っていたのだった。
「怪我してるから、心配で」
私に気づいた息子は、ばつが悪そうにそう言った。誰にも話さず、一人で猫の世話を続けていたらしい。叱られると思っていたのか、しばらく私の顔色をうかがっていた。
私はその日、猫を動物病院に連れていくことを息子と約束した。上履きが泥だらけになる理由は、これで分かった。金曜日だけだったのは、部活のない曜日を選んでいたからだという。
家に帰る道すがら、息子は少しだけ誇らしそうな顔をしていた。