「すみません、ここ座ってもいいですか?」
新快速に乗り込んだ瞬間、目に入ったのは4人掛けのボックス席だった。
そこには年配の女性が2人。
ところが残りの2席には、大きなバッグと手提げ袋が堂々と置かれている。
車内はそこそこ混んでいて、立っている人も何人かいた。
私は荷物の置かれた席を指さし、もう一度聞いた。
「この席、空いてますよね?」
すると女性の1人が、申し訳なさそうな顔を作って言った。
「すいません。次の駅で知り合いが乗って来るんです」
一瞬、耳を疑った。
次の駅までは約15分。
しかも、ここは指定席でも予約席でもない。
「次の駅から乗る人のために、今から2席取ってるってことですか?」
私が確認すると、
「そうなの。もうすぐ来るから」
と当然のように返された。
隣の女性も、
「ちょっとくらいいいじゃない」
と笑っている。
いや、“ちょっと”じゃない。
少なくとも15分間、混雑した車内で2席を荷物に使うことになる。
私は言い争う気はなかったので、
「自由席ですし、今乗っている人が座る席だと思いますけど」
とだけ伝えた。
すると女性は急に不機嫌そうな顔になり、
「だから次で乗って来るって言ってるでしょ」
とバッグを抱き寄せるどころか、さらに座席の中央へ置き直した。
さすがに呆れた。
その会話を聞いていた向かい側の男性も、ちらっとこちらを見た。
数分後。
杖を持った高齢の男性が乗ってきた。
空席を探している様子だったが、例の2席は相変わらず荷物置き場。
私は思わず、
「こちら、荷物がなければ座れるんですけどね」
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