「お客様、申し訳ございません。今回はビジネスクラスのお席をご利用ください」
搭乗口でスタッフから告げられた瞬間、私は自分の耳を疑った。
え?
今、何て言った?
私は間違いなくファーストクラスの航空券を持っている。
しかも、今回が人生で初めてのファーストクラスだった。
何か月も前から楽しみにしていた旅行だった。
せっかくなら最高の体験をしたいと思い、奮発して予約した。
出発前から期待で胸がいっぱいだった。
シンガポール航空のファーストクラス。
そして、ファーストクラス利用者だけが入れる特別な空間「The Private Room」。
空港に到着した私は、専用の案内を受けてラウンジへ向かった。
落ち着いた内装。
ゆったりした座席。
丁寧なスタッフの接客。
料理も飲み物も素晴らしく、普段の旅行では味わえない贅沢な時間だった。
「これがファーストクラスか……」
思わず笑みがこぼれた。
高いお金を払ってよかった。
そう心から思っていた。
ところが、幸せな時間は搭乗開始とともに一変した。
搭乗口へ向かい、パスポートと搭乗券をスタッフに差し出した。
スタッフは端末を確認したあと、少し困ったような表情を浮かべた。
そして、別のスタッフを呼んだ。
何やら2人で画面を確認している。
嫌な予感がした。
「お客様、少々お待ちいただけますか?」
数分後、告げられたのが冒頭の言葉だった。
「ビジネスクラスをご利用ください」
私はすぐに聞き返した。
「どういうことですか? 私はファーストクラスを予約しています」
するとスタッフは、運航上の事情による変更だと説明した。
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