2024年、都内で一冊の回想録の出版記念パーティーが行われた。その本のタイトルは「旧皇族の記憶」。伏見宮家に生まれ、現在90歳となる旧伏見宮家当主・伏見裕章さんが語る、自身の波乱万丈な人生を振り返ったものだ。この回想録には、彼が15歳で皇籍を離脱し、一般国民として歩み始めた日々、そして手に入れた“自由”についての深い思いが綴られている。
1932年、伏見宮家に生まれた伏見裕章さんは、皇族としての厳しいしつけを受けながら成長した。毎朝の朝礼では、「殿下は最善です」と言われ、全ての行動が注視される日々。彼は「男の子だから」と、親と一緒に過ごす時間さえも制限され、孤独に耐える教育を受けていた。
「寂しさを感じながらも、それが当然だと思っていました」と振り返る伏見さん。その厳しさは、皇族としての責務を背負わされたからこそのものであり、それが彼にとっての“普通”であった。
第二次世界大戦が終わると、日本は大きく変わり始めた。1946年、GHQの意向により、11の宮家と51人の皇族が皇籍を離脱することになった。伏見宮家も例外ではなく、伏見裕章さんも15歳でその身分を失った。「生活は一変しましたが、それは同時に自由の始まりでもありました」と語る。
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