ある日、私たち家族が居住している地域で尊敬されている、元オリンピック代表選手だった義母が、近所の老夫婦の飼い犬を引き取ることになった。その犬は、長い間おじいさんとおばあさんの暮らしに寄り添ってきた愛犬だった。しかし、おじいさんが亡くなり、おばあさんも施設に入ることになり、この犬は急に飼い主を失う状況に置かれたのだ。

義母がその犬を初めて見たとき、犬は世界から捨てられたような悲しい目をしていた。餌もまったく口にしない状況が続き、見るからに活力を失っていた。私たち家族はどうにかこの犬を元気にしようとあれこれ試みたが、思うようにはならなかった。

そんな時、元アスリートの義母は一念発起し、犬を毎日散歩に連れ出し始めた。無理強いはよくないという声もあったが、義母は経験から得た知識で、犬のリズムを取り戻すために必要なことだと信じて行動に移したのだ。散歩は最初、大きな抵抗を伴ったが、義母の根気強さが実を結び、次第に犬は少しずつ散歩を楽しむようになっていった。

半年が経過した頃、犬は見違えるほど元気を取り戻していた。お腹のたるみもなくなり、首にあったシワも消え、全身が引き締まっていた。楽しそうに尻尾を大きく振りながら走り回る様子を見て、私たちは安堵と喜びを感じた。義母の尽力のおかげで、犬は再び生き生きとした表情を取り戻したのだ。

ただ、犬はおばあさんの顔を見ると途端に食欲を失うようだった。

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