静かな住宅街に住む中村夫婦から始まる。その日、妻の由美は、一階のリビングで優雅なティータイムを楽しむ予定だった。太陽の光が差し込む部屋で、彼女が手にするティーカップは、かつて彼らの愛猫チャチャが好んでいた椅子の横にそっと置かれていた。

2年前の夏、チャチャは17歳の長寿を全うし、虹の橋を渡った。長きにわたり喜びと癒しをもたらしてくれた存在がいなくなり、部屋にはその影が色濃く残る。由美も、夫の健一も、彼を失った悲しみから完全には立ち直ることができずにいた。

とはいえ、生活は続く。ある日曜の午後、由美が近所の小さな公園を散歩していると、ピクニックを楽しむ家族や幼い子どもの遊ぶ様子が目に入った。そんな中で、ベンチに座り、どこか寂しげな猫が一匹、孤独に佇んでいるのを見つけた。

茶色と白の毛並みを持ち、その姿はどこかチャチャを思い出させた。

彼女は、猫の元に自然と足を運び、その目を見つめると、心の中に暖かくも切ない感情が湧き上がってきた。

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