かつて世界最大・最強と謳われた戦艦「大和」。しかし、80年以上前に建造されたこの巨大戦艦は、現代の最新技術をもってしても、もはや二度と造ることはできないと言われています。
その理由は、大和が「質」で「量」を凌駕するという、当時の日本の国力をかけた思想の結晶だったからです。圧倒的な工業生産力を誇るアメリカに対し、数で劣る日本が選んだ道は、一隻で多数を相手にできる史上最強の戦艦を建造することでした。
その製造技術は、今や「ロストテクノロジー」と化しています。
特に、全長20メートルを超える主砲の製造は神業の域に達していました。その加工に必要だった巨大な旋盤は、奇跡的に現存しているものの、もはやそれを操れる職人が存在しないのです。当時の職人たちは「鋼鉄は生き物だ」と語り、削る際の摩擦熱で劣化してしまう鋼の性質を完璧に理解し、絶妙なタイミングで冷却と切削を繰り返すことで、あの巨大な主砲をミリ単位の精度で作り上げました。その技術は、数値化できない、まさに「匠の技」だったのです。
また、その建造費は当時の国家予算の3%に相当する1億4000万円。現在の価値にして、実に3000億円という、まさに国のすべてを注ぎ込んだプロジェクトでした。
しかし、その最強伝説には、皮肉な後日談も存在します。大和の主砲はあまりに強力すぎたため、敵艦の装甲をいとも簡単に貫通してしまい、艦内で爆発することなく海に落ちてしまうことがあったというのです。軍事ファンの間では「最強からは程遠い存在だったかもしれない」と語られることもあります。
沖縄特攻作戦で、3000名以上の乗組員と共に海の底に沈んだ悲劇の戦艦。
その評価は様々ですが、日本の技術の粋を集めて造られたその雄大な姿は、今もなお、多くの人々の心を惹きつける、計り知れない「ロマン」を宿しています。