とらちゃんはその時、突然思い出した。実家の愛犬、花がどれほど愛されていたか、そして自分と一緒に過ごした日々がどれだけ大切だったかを。

その日、とらちゃんは大学の関係で一人暮らしをしており、久しぶりに実家に帰っていた。子供のころからずっと一緒だった花。帰宅すると、いつも足音を聞いてすぐに飛んで来てくれる。お母さんも嬉しそうに迎えてくれるのが、何よりの幸せだった。

「花、久しぶり！」と声をかけると、花は元気よく尻尾を振って駆け寄ってきた。幸せなひととき。お母さんが言った。「休みの間、ずっとこっちにいるのね？」

とらちゃんは少し考えてから、ふと答えた。「うん、でもあまり長くいると花が寂しがるかも。」

花は年齢を重ねてきており、少しずつ体力が落ちてきている。そのため、家の中でも彼女が自由に動けるように、庭にいることが多くなった。

実家には広い庭があり、ちょっと外出する際には花を庭に繋いでおくことが常だった。

近所のおばあちゃんたちも可愛がってくれたので、花も特に寂しがることはなかった。

ところが、その日、思わぬ出来事が起きた。とらちゃんが出かける準備をしている最中、お母さんが驚きの声を上げた。

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