私が初めて丸と出会ったのは、忘れられない夏の日でした。物心ついたときから、私の周りにはいつも静けさが漂っていました。家族はそれぞれの仕事に追われ、家にはほとんどいませんでした。学校では無口だった私はクラスで目立たない存在で、それゆえにいじめに遭ってもいました。周囲の冷たい視線にさらされても、心は冷えていくばかりで、感情を押し殺して生きていました。

そんな時に私の目の前に突然現れたのが、祖父が持ってきた大きな箱に入った子犬、丸でした。彼は私の人生に色を添えてくれる存在となり、その瞬間から私の心は少しずつ温かくなっていきました。丸は私の弟であり、親友でもありました。

学校から帰宅すると丸が迎えてくれ、それからの時間はすべて丸と共に過ごしました。彼に本を読み聞かせたり、一緒に遊んだりしながら、私たちはお互いの生活を補い合いました。丸は私に向けて尻尾を振りながら、いつも私の隣にいてくれました。

夕闇が迫る時間、窓の外をじっと眺めていると、心の奥底に押し込めていた悲しみが一気に溢れ出し、涙が止まらなくなりました。

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