街の片隅、私はいつものように自分の犬と静かな夕方の散歩に出かけていた。その道すがら、数ヶ月前からずっと気になっていた一匹の野良犬がいる。彼の姿は見るたびに胸を締め付けられるような何かを感じさせた。毛はぼさぼさで、きっと満足に食事もしていないのだろう。痩せ細った体と少し伏し目がちな彼の表情は、人間に慣れているとはいえ警戒心が強く、かといって決して完全に人を拒絶するわけでもない。

少し距離を保ちながら、散歩中の他の犬たちをじっと見つめているその姿が、なんとも切なく胸に染みた。

私は家に帰るたびに思った。「連れて帰りたいけど、うちにはすでに犬がいるし、簡単に責任を取る決心ができない」。そう心の中で葛藤しながらも、その野良犬との出会いの日々が続いていった。

先週、思いがけない変化が訪れた。いつもの場所にその野良犬がいたのだが、よく見るとその首に真っ赤な首輪がはめられていた。これは一体どういうことだろう？少しそわそわしながら周囲を見回したが、彼を連れてきた飼い主らしき人物は見当たらない。

しかし、その日の夜、私は近くの公園でその犬を再び見かけた。なんと、リードを持ったおじさんがその野良犬を連れて歩いていたのだ。野良犬は、以前とはまるで別の犬のように嬉しそうに、誇らしそうに尻尾を振っている。見るからにその一瞬が彼にとっては夢のような体験だったのだろう。

その光景を目の当たりにしながらも、私は少し複雑な気持ちだった。

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