「こんなものが楽器になるわけないだろ!」
父がそう言って笑った瞬間、祖父の表情が少しだけ曇った。
きっかけは、町内会の文化祭で開催された「昔の道具・不思議な道具クイズ」だった。
会場のステージには、古びた釘のような金属製の物体が2つ並べられていた。
1つは途中で折れ曲がったような不思議な形。
もう1つは、どこにでもある普通の釘に見える。
司会者がマイクを持って尋ねた。
「さて、皆さん。この2つを使って演奏する楽器は何でしょう?」
会場はざわついた。
「楽器?どう見ても釘じゃないか」
「大工道具の間違いだろう」
「こんなもので音楽なんてできるの?」
父も腕を組んで笑っていた。
実は、父は地元で建築会社を経営している。
道具には詳しく、こうした問題には自信があった。
「これは楽器じゃない。誰かが適当に釘を曲げただけだ」
父がそう言い切ると、周囲の人たちも笑った。
しかし、会場の一番後ろに座っていた祖父だけは違った。
祖父は80歳を過ぎていたが、昔は町で有名な大工だった。
父が子どもの頃から、祖父の作業場には不思議な道具がたくさんあったという。
司会者が答えを発表しようとしたとき、祖父がゆっくり手を挙げた。
「ちょっと、それを貸してもらえんかね」
会場が静かになった。
祖父は2つの金属を手に取ると、テーブルの上に置いた。
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