クルマは命を預ける工業製品でありながら、メーカーの野心や遊び心がそのまま形になった存在でもあります。だからこそ、ときどき「本当にテストしたの?」と疑いたくなる設計ミスや、「なぜあえてその仕様?」と首をかしげる迷車が生まれてしまうのです。
象徴的なのが、メルセデス・ベンツ初代Aクラス。将来のEV化を見据えた二階建てフロア構造のせいで重心が高くなり、エルクテストでは時速60km/h程度にもかかわらず横転しかける大失態を演じました。
販売停止と大掛かりな改良を経て安全性は確保されましたが、「未来志向の設計」が一歩間違えば致命的な弱点になることを世界に知らしめた例と言えます。

アウディ初代TTもまた、デザイン優先が仇となった一台です。丸みを帯びた美しいボディは、高速域でダウンフォースを失い車体を浮き上がらせ、ヨーロッパで横転事故が続発しました。リアウイング追加などの改修が無償で行われたものの、スタイリングを守りたいデザイナーと、安全性を優先せざるを得ない現場の葛藤は、今も語り草になっています。
ドアまわりの迷走例としては、RX-8やFJクルーザーなどのBピラーレス観音開きドア、そしてルノー・アヴァンタイムの超巨大2ドアが有名です。観音開きは荷物の積み降ろしこそ便利なものの、狭い駐車場ではそもそもドアが開かず「積んだ荷物が取り出せない」事態に。アヴァンタイムに至っては、1枚約56kg・長さ1.4mのドアをダブルヒンジで無理やり成立させた結果、「先進的」というよりほとんど変態的な構造になってしまいました。

変わり種リコールも強烈です。テスラは外部スピーカー機能「ブームボックス」で、おなら音を含む効果音を走行中にも鳴らせるようにしてしまい、歩行者警告音がかき消される危険性を指摘されてリコールに。
スズキ・エブリイは、タイミングチェーン不良によるエンジン交換リコールの対象が、なんと「世界でたった1台」だけというレアケースでした。
メーカーが世に送り出した一台一台には、華々しい成功だけでなく、こうした“黒歴史”も静かに佇んでいます。設計ミス、謎仕様、そして思わず笑ってしまうリコールの裏側には、常に「もっと良いクルマを作りたい」という技術者たちの挑戦がある。迷車たちは、その挑戦の傷跡であり、進化の証でもあるのかもしれません。
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