電車に乗った瞬間、私は思わず足を止めた。
車内には立っている人もいる。
なのに、窓際の座席では小さな子ども二人が、靴を履いたまま座席の上に立っていた。
しかも、ただ少し膝を乗せているとかじゃない。
両足でしっかり座面を踏みしめて、窓の外に手を伸ばしながら、楽しそうに外を眺めている。
その横で母親らしき女性はスマホ。
父親らしき男性は目を閉じて、見て見ぬふり。
いや、見えてるよね?
絶対に見えてるよね?
私は一瞬、声をかけるか迷った。
子どもに直接言うのは違う。
子どもはまだ分からないこともある。
でも、それを教えるために大人がいるんじゃないの?
座席は家のソファじゃない。
次に誰かが座る場所だ。
しかも車内には、明らかに座りたそうな年配の方が立っていた。
その人は座席を見て、子どもの靴底を見て、諦めたように吊り革へ手を伸ばした。
その瞬間、私の中で何かがプツンと切れた。
私は親子の前まで行き、なるべく落ち着いた声で言った。
「すみません。靴のまま座席に立つのは危ないですし、汚れてしまうので、下ろしてもらえませんか?」
すると母親は、スマホから目を離さないまま、面倒くさそうに言った。
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