「子どもがこんなに小さいのに、あなた一人で座っていて平気なんですか?」
新幹線が駅を出て間もなく、突然そんな声が頭の上から降ってきた。
顔を上げると、通路に立っていたのは、小学生くらいの男の子を連れた女性だった。
その後ろには、大きな荷物を持った夫らしき男性も立っている。
私は一瞬、自分が座席を間違えたのかと思い、テーブルの下に差していた指定席券を確認した。
号車も座席番号も間違っていない。
窓側のこの席は、数週間前に私が予約し、きちんと料金を支払って購入した席だった。
「すみません、ここは私の指定席ですが」
そう伝えると、女性は呆れたようにため息をついた。
「それは分かっています。でも、見れば分かるでしょう?私たちは家族三人なんです」
その言い方は、まるで私が一家を引き離した張本人であるかのようだった。
事情を聞くと、彼らが持っている指定席は二席だけだった。
母親と父親の席は横並びで確保できたものの、子どもの分は指定席を取っていないという。
そして、私に席を譲らせ、私は自由席へ移動すればいいと考えているらしい。
「代わりの指定席はどちらですか?」
私が尋ねると、女性は悪びれもせずに答えた。
「自由席に行けば、どこか空いているんじゃないですか?」
ちょうど連休初日の昼だった。
ホームも車内も混雑し、自由席の通路には立っている人の姿まで見えていた。
空席など簡単に見つかる状況ではない。
つまり、彼らの言う“交換”とは、私が購入した指定席を明け渡し、数時間立って移動することだった。
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